レモンドロップス。
読み終わると、手紙をたたむことも忘れて呆然としてしまった。
何も知らないふりをして、健にぃは全部気づいていたんだ。
あたしの本当の思い、本当の願い。
面談のときに話した言葉を健にぃは、あたしの代わりに陽斗に届けてくれていた。
小さなつぼみを守ろうとしてくれていたんだ。
健にぃの大きな笑顔を思い出すと、にじんできた涙で目の前の視界がぐらりと揺らいだ。
「彩香のことをすぐに思い出したよ」
陽斗は正面を見据えたまま静かに言った。
「竹村が言ってる『人間』のこと。彩香だってすぐ分かった」
幼なじみなんだよな?と聞かれ、あたしは黙ってうなずいた。
そっか、そうつぶやくと陽斗はそれ以上のことを尋ねなかった。
「その手紙を何回も読んでたら、何やってるんだろ俺、って、急にそう思えてきてさ」
あれほど固かった陽斗の冷たい殻。
健にぃの手紙がそこに小さなひび割れをピシリを走らせたのかもしれない。
「でも手紙を読んでからもしばらく、俺は動くことができなかった。このままじゃいけないって思ってたけど、まだ彩香に会いに行く勇気が出なかったんだ」
弱っていた陽斗の心のことを聞くのはやっぱり辛かった。
そういうことを淡々と語る陽斗の姿にも胸が痛んだ。
「どうして・・・?」
「最後に彩香に酷いこと言って逃げたのに、今更どう言えばいいんだろう。もし会ったとしてもまた傷つけてしまったらどうしようって、まあそんなことばっかりくよくよ考えてて」
会えばまた同じことを繰り返してしまう、そう考えてたのはあたしもそうだ。
こんなところまで似ているのに、似ているからこそ、近づけなかったなんて皮肉すぎるよ。