レモンドロップス。
「今思えば、結局その時もまだ自分のことばっかり考えてたんだよな。彩香や竹村の気持ちなんて本当は思いやってなかったんだ」
陽斗はそう言いながら今度はポケットから携帯電話を取り出した。
「そんなときに、彩香からメールが届いたんだ」
はっとして陽斗を見ると、じっとあたしを見つめる陽斗と目が合った。
とたんに頬に火がついたように顔中が熱くなってくる。
「あ、あれはなんか手が勝手に動いたっていうか、無意識にっていうか・・・」
「ビックリしたけど、嬉しかったよ」
焦って言い訳するあたしをフォローするように、陽斗はそっと言葉をつないだ。
「冗談じゃなくて、ホントに夢かと思った。あれ読んで、今度こそ会いに行こうってそれだけ決めたんだ。それ以外の気持ちは何にも浮かんでこなかった」
今までの迷いもモヤモヤも消え去って、陽斗の中にたった一つ残った言葉がそれだった。
その言葉が嘘じゃないことは、ここに陽斗がこうしていることが証明している。
「それであたしに手紙くれたんだ」
「でもごめん、なんか自分の名前書きにくくて結局表はイニシャルだけにしたけど」
思わずふふっと笑みがこぼれる。
二人でこうして笑い会える日が来るなんて、全然現実味がなくてなんだか頭がクラクラした。
とその時、陽斗が言った。
「俺ホントにだめだな。今でも彩香に会えてるのが信じられない。本当に会ってくれてるのか自信なかったし」
「あたしもそれ同じだよ。でも、陽斗にどうしても言いたいことあって」
すうっと息を吸うと、柔らかな春の空気が体中に広がった。