アトリエの人魚
「それは…2時間程ご一緒した時、貴女の論文の話や僕の絵の話をしました。お恥ずかしい事に今は全く絵が描けず…都内にあった家を手放さなくてはならない程に…ここは九十九里の亡くなった画家だった祖父のアトリエです。貴女は僕が描いた絵を見たいと言って下さったので、ここにお連れしたのですが…」

私はビックリした。ここは九十九里?あの千葉の?
「お連れしたのですが、余程気分が良かったのか…眠かったのか、貴女は洋服を脱ぎ捨てて眠ってしまわれたのです。」

「え…じゃぁ?」
私は恥ずかしさから手で顔を覆った。
だから私だけ何も着ていなかったのか。木崎さんはTシャツにスウェットを着ていたのに。
木崎さんは、深く頷き満面の笑みで「ええ、見てはしまいましたが触れていませんよ。あいにく、このベッド以外に敷き布団やソファーが無くて…僕も同じベッドに入ってしまいましたが。」と言った。

こんなにキッパリ言われると少し悲しいような気もするけど。無意識に抱かれていなくて良かった。

「とんだ醜態をさらしてしまいました。ごめんなさい。春だからかしら…ところで、私はまだ木崎さんの作品を見てないんですよね?」
「いや…美しいものを見せて頂きましたよ。素の輝きがあると思いました。」木崎さんは、独り言のように呟いて、しばらくしてから「僕の絵を見てくれますか?」と微笑んだ。

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