教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

医者の息子で、医学部進学希望の彼……。


それは、美羽ちゃんも悩むはずだよね。


あんなに悩んでいたのに、彼に相談できなかった理由が解った気がした。


複雑な立場の美羽ちゃんに、私はなんて残酷な話をしてしまったんだろう。



後悔しても、仕方がない。


一度口から出た言葉は、文字と違って、消しゴムで消すことも、削除することもできない。


相手の心に深く刻みこまれたまま、ずっと残ってしまう。


その傷口が全く塞がらないうちに妊娠の陽性反応、さらには切迫流産で入院。


毎日、追い詰められてどんどん傷は広がって……。


どんな顔をして、美羽ちゃんに会えばいいんだろう。


答えが出ないまま、お母さんから聞いた『MFICU』まで来てしまった。


カーテンが掛けられた個室のドアが並んでいる。


そのうちの一ヶ所から、かすかに聞こえるすすり泣き。


美羽ちゃんの部屋だった。

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