教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

姉貴がベビーシッターを引き受けてくれたので、菫もすぐに岩谷へ電話していた。


「・・・・・・うん、そう。I高校の五十嵐先生の奥さんなんだって。

裕香のお兄ちゃんの事、知ってるらしいよ。

五十嵐先生も奥さんもいい人だから、大丈夫だって言ってたし。

だから、明日一日で指導案作って、岡崎先生をぎゃふんと言わせてやろうよ!」



ずいぶん焚き付けてるなあ、菫。


でも、岩谷の性格から考えて、おそらくその方がやる気が出るだろう。


明日は朝一で駅へ姉貴を迎えに行って、岩谷を乗せて、五十嵐さんのお宅訪問。


それから5時まで部活指導、また五十嵐さんの家に二人を迎えに行って、それぞれ送り届ける、と。


当初、週末くらいは菫と過ごせるだろうと期待していたのだが、そんな余裕は全くなくなった上、彼女の機嫌を損ねてしまった。


俺、日頃の行いはいいはずなんだが。


こんなに真面目な教員、なかなかいないぞ。


だいたい、木内の件だって、吉川の指導が行き届かなかったのがそもそもの原因だ。


あいつのせいで、菫との間に余計な波風は立つし、踏んだり蹴ったりだよ全く。


さらに、岩谷が岡崎先生とうまくいかない件も、本当は俺ではなく、教務主任に助けてもらうのが筋だったりする。


だが、それをやると岡崎先生が教務主任から注意を受けることになり、ますます岩谷に対する扱いが悪くなる恐れも十二分にあるからな。


・・・・・・菫のためとはいえ、とことん貧乏くじ引いてる気がしてきた。


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