教育実習日誌〜先生と生徒の間〜


「お待たせいたしました、松本です」


『お忙しいときにすみません。

木内ですが、先生にお伝えしたいことがありまして。

もうご承知のように、美羽は今入院中ですが、退院のめどが立ちました』


「そうですか! それで今、どのような状態ですか?」


『今朝のエコーで心拍が確認されました。

出血もどうやら止まったようなので、このまま何でもなければ木曜日に退院できそうです。

それで、今後のことについて先生にお伝えしたいのですが、本人も話したいそうなので、病院へお越しいただけませんか?』


「わかりました。5時半にはそちらへ着くようにします。

でも、私が行っても大丈夫ですか?」


MFICUはおそらく、身内以外の男性は入室できないと思うのだが。


『心拍が確認されたので、さっき一般病棟へ移りました。

個室ですから、どうぞ気兼ねなくお越しください』


新しく移った部屋番号をメモして、電話を切った。



この話ぶりだと、おそらく決意したんだろう。


木内は実家が遠いから、今、ここにいる間に話そうとしているに違いない。


準備が良すぎるかも知れないが、郵送するにしても配達証明が必要になるような大事な書類だから、俺が先回りして病院へ持参することにした。



退学届を。



それと一緒に、あるものを渡そうと考え、進路指導室へ。


あった。これもセットで渡すのが、担任としてできる最後の仕事だから。

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