教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

吉川の親父さんは、コーヒーを二口飲んで、さらに続けた。


「私の父は外科医でした。

今のように『温存』などできなかった時代の外科ですから、毎日とにかく『切って』いたんですよ。

切ることによって元気になれる患者さんばかりではありません。

大事な臓器を、手を、足を、切り取ってもなお治せなかった患者さんを看取るのが辛い、だからお前は外科はやめておけ……そう言ってました。

やぶ医者だとご家族から責められ、生きて帰ることのできなかった患者さんを見送るときの無力感。

そんな経験を、なるべく息子にはさせたくなかったんでしょう。

もちろん、婦人科でもそれはありますし、耳鼻科も口腔外科も……結局病院はどの診療科も死と隣り合わせなのですが」



死んだ親父の事を思い出した。


親父も手術の甲斐なく、術後わずか半年で逝った。


俺と姉貴が危篤の知らせを受けて、学校から病院へ行くまでの間、ずっと心臓マッサージを続けてくれた先生。


あの時の先生も、無力感に苛まれていたのだろうか。



「私の父も、今から17年近く前に癌で亡くなりました。

当時の先生には本当に良くしていただいたので、感謝の気持ちしかありません」



俺がそう言うと、かすかに微笑みながら、こう答えてくれた。


「そういう患者さんやご家族も、もちろん沢山いらっしゃいます。

それでも、嘆き悲しむご家族を見るのは、辛い事です」


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