教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
……そういえば。
小学校時代、すっごくおとなしくてほとんど話をしたことがないっていう噂の女の子が、隣のクラスにいたような。
「そういう子がいたという話は聞いたことがあります」
「それはもしかしたら、単なる人見知りや恥ずかしがり屋ではなく、場面緘黙(かんもく)かも知れません。
私もまだ勉強中なのですが……、何らかの理由で大勢の人前では話すことができなくなる子どもがいます。
発症は大抵小学校低学年まで、まれに中学・高校でそうなる場合もあるらしいです。
家では普通に話すことができるため、保護者がそれに気づかないまま、見つけるのが遅れて有効な手立てができずに悪化させることも多いのです。
早期に配慮されていたり、環境の変化で治る確率も高いのですが、ずっとそのままという人もいます。
木内は家が遠いため、下宿しながらこの学校へ通う生徒です。
環境がすっかり変わっているから、もしかしたら治るかと期待しているのですが……。
特別扱いも逆効果になるため、いじめに繋がらないように周りへそれとなく働きかける程度しかできないのが現状です」
そっか。
先生も気にしていたんだ。