恋の相手はメイド君!?
「彼氏がほしいから、応募したんやろ?」


「彼氏…いや、別に」


そういうわけじゃない。


あたしはただ、暇つぶし感覚で応募したにすぎない。

「あれな、クリスマスに彼氏がおらんくて一人で過ごすのが嫌な人のためのサービスなんよ」


かなーり、余計なサービスだわ。


「そっかぁ、欄さんには気に入ってもらえんかったんやね」


小さな車の天井に、腕を乗せて犬のようにシュンとする千尋。


何か、慰めてしまいたくなる。


あたしは、反対側から背伸びして大きな子供のような千尋の頭を撫でてやった。

サラサラの黒髪は、見た目で想像していた通り滑らかで触り心地がよかった。



「恥ずかしかったけど……ちょっとだけ、夢が叶ったかな」


「夢?」


「あたしなぁ、彼氏と買い物して家に帰る、とかやってみたかってんよ。

だから、ありがとう」


サービスでやってた千尋にお礼を言うのもどうかと思うけど、お礼を言いたくなった。


一生懸命、あたしにサービスしようとしてくれているんだもんね。


「へへっ。
お礼言われるんは、何か照れるなぁ」

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