マスク・ドール
道に倒された女性はすでに動かない。

そのモノが動くたびに、道路には女性の血が飛び散る。

やがてその手に、女性の顔の皮が―。

そのモノはゆっくり立ち上がり、両膝を曲げ、高く飛んだ。

家の屋根を飛び移りながら、その場を後にした。

後に残されたのは、顔の皮を剥ぎ取られた女性の死体のみ。

そして一部始終を、離れたビルの屋上から見つめているモノがいた。

黒づくめの服装をしたマノンだ。

「…ふぅん。また厄介な事件になりそうだね」

いつもなら笑顔で語るマノンだが、今は眼が険しい光を帯びている。

「まっ、姉さんの相手じゃないな」

そういうと己の影に自分自身をかぶせ、姿を消した。
< 3 / 59 >

この作品をシェア

pagetop