マスク・ドール
ヒールの音は、女性のもの。

他には何の音もしないのに、気配だけが感じる。

後ろから、じっと見られていることが分かる。

「いやっ…いやっ!」

女性は恐怖に顔を歪め、ついには走り出した。

それでも足音は自分の分しかない。

やがて自分のアパートが見えてきた。

ほっとした女性の口が、何かで覆われた。

「っ!?」

悲鳴を上げるヒマもなく、女性は街灯のない暗い道に引きずりこまれた。

そして―

バリバリッ

ビジャッ

何かを引き裂き、何かが飛び散る音が闇の中に響いた。

女性を暗い道に引きずり込んだのは、大きな人型のモノ。

道に女性を押し倒し、両腕を大きく振るっている。
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