天使と野獣

「せっかくだが私の主義では無い。
君たちこそ罪を悔いて自首をしたらどうだ。」



佐伯は冷たく言い放った。


悪徳刑事が優越感にしたっている間に、
京介は黙って周囲の状況を観察していた。

その時の京介は
清楚な美貌のひ弱な少年、

まさにそんな雰囲気を出して
相手に警戒心を抱かせない。


だから木原も、京介は蚊帳の外、
佐伯だけを相手に話している。


地下室の奥に数人の気配がする。

何をしているのか分らないが、
なにやら動き回っているようだ。

それと望月たちの傍に男が二人。

おや、あいつは… 見覚えがあるぞ。

そうだ、あの時父さんを刺した奴だ。
そうか、あいつも仲間だったのか。

周囲を… 記憶力、洞察力も抜群の京介、
瞬時に大体のところは把握できた。


まずこいつらのピストルを何とかして… 

と思った時に佐伯が蹴られて
転ぶような格好で
望月たちの方へよろめいた。


今だ。

京介は一瞬にして
危険を顧みない猛獣、
タイガーに急変した。

慌てた木原がピストルを向けたが、

京介の瞬発力のほうが一瞬早かった。


瞬く間にピストル共々腕を蹴り、
そのまま足を大きく回転させ、
もう一人の悪徳刑事・吉田の顔面を蹴った。


余程威力が無ければそうはならないだろうが、

京介のひと蹴りで吉田は気を失って床に転がった。


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