天使と野獣
「大丈夫ですか。」
自分達が来たために重症の京介を起こしてしまった、
と恐縮しながらも、
その京介の動きに信じられないものを感じていた。
「京介、痛むか。」
「慣れた。」
「東条君、お茶かコーヒーか… 何か飲むかい。」
安本が当然のような態度で京介に声を掛けた。
「牛乳。」
京介も、何故安本が家にいるのか、
などと詮索せずに素直に応じている。
安本輝明…
自分の悩みを完全に忘れ、
目の当たりにした京介の行動に驚かされながらも、
快い興奮を覚え、
受験生としての悩みや時間も忘れて居座っていた。
京介は犯人の中に警察官、
それも捜査五課の木原と吉田という刑事が居た事や、
犯人グループが七人、
その中の一人は羽田空港で殺傷事件を起こした男、
と言う事を話した。
「あの時,父さんを傷つけた奴だよ。
しかしおかしいなあ。
俺の攻撃を受ければすぐには動けないはずだが…
考えられる事はまだ仲間が居たと言う事だ。
俺は見ていないし、そんな気配も無かった。
あいつらや警部さんがいないと言うことは、
8人以上の仲間が来て
警察が来る前に運び出したと言う事になる。」
自分は銃弾を受けた、
ということですぐ父のところへ行こうと、
その場を離れた.
少なくともあの時、そんな気配は微塵もなかった。
可能性は…