天使と野獣
木頭たちも驚いた。
さっき言われた言葉は正しい。
しかし自分達は藁にもすがる思いでこうして来てしまい、
取り出した銃弾を見て
怪我の深刻さを改めて感じた。
どうする術もなく、
こうして恥を忍ぶ形で居座っているが…
しかし、次の光景を見てまたまた驚いた。
栄に名前を呼ばれた京介が、
本来なら銃弾摘出と言う
大手術をしたところの京介が、
静かに目を開けて、
その長いまつげに覆われた涼しげな眼差しを
父親に向けている。
「父さん、どうかしたのか。」
「おう、起きたか。
悪いな、せっかく眠っていたのに。
あのな、お前が家に戻る時、
佐伯さんはどうしていた。
よく分らないが、
警察が駆けつけた時に姿が無かったらしい。」
栄は京介に木頭に聞いた話を告げている。
「本当か。
俺は奴らを倒してからすぐに家に戻った。
あの警部さんは
大した怪我は無かったから大丈夫と思った。」
京介が佐伯を庇って銃弾を受けたのだから無傷のはずだ。
闘ったのも京介一人だった。
いないと言うことは、
誰かに拉致されたということなのか。
しかし今までの経験から、
京介にやられた奴らが簡単に力を取り戻す事はあり得ない。
見かけは踊っているような華麗な動きで闘っていても、
その威力は並みのものではないはずだった。
と言うことは…
まだ他に黒幕か仲間がいたのか。
京介は布団から起き出して、
木頭たちが座っているソファーにゆっくりと移動し、
足を伸ばしてソファーにもたれている。