天使と野獣

「すみません、お邪魔しまして。
さっきまで管理人室で待たせてもらっていたのですが… 

明日、出直そうと駅まで来たところで姿を。
食べ終わるまで待っているつもりでしたが、僕も… 」



はっきり言わなくても、
安本が空腹だと言う事は分かる。

多分、昼から何も食べていないのだろう。



「長い事待っていたのかね。
大田区まで行っていたから遅くなってしまったんだよ。」


「はい。お母さんのお墓参りに、と聞きました。
僕も、お父さんと東条にお礼が言いたくて… 」


「まあ、座りなさい。
今、注文するが、とりあえず,
このすしを食べながら話そう。」



そう言って栄は自分のすしを勧めている。

京介は安本を見ても無表情だ。

こいつは父の知り合い、
自分には関係ない、と言う様な顔だ。

京介の性格は分かっている栄。

食事を楽しんでいる京介を、
話の中へ引っ張る事はしない。



「あの… 第二希望のところに入れました。

あれから家族に話し… 
初めは勘当されそうな気配でしたが、
あれを飲まなくても勉強できるようになり、
以前より気分が良い感じです。」


「そうか、それは良かった。
前も言ったが、あんたにはそれほど影響が出ているようには見えなかったからな。

ひどくなれば、体に悪いと思っても捨てられないものだ。
あんたは、ちょっと京介に言われただけで躊躇いもなく捨てた。

その精神力はたいしたものだ。
自分に自信がついたかね。」


「はい。 僕、将来の進路、決めました。」


「ほう、決めたかね。
大学時代は人生においても貴重なものだ。
目的があるか無いかで、
その生き方はかなり違ってくるからな。」


「はい。それで、お父さんに覚えておいて欲しいなあ、と… 
すみません、こんな時間に… 」



その時、京介が反応した。
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