天使と野獣
全く無視して食べていたが、
安本がそんなことで待っていた、ということで気分が悪かった。
東条栄は自分の父であって、
安本の父ではない。
そんなことは自分の親に言え、と言う様な顔だ。
栄が誰にでもこんな話し方をするのは知っているが、
それにかこつけて安本まで甘えている。
と言う、あきれたほど子供っぽい、
ジェラシーのような気分になっている。
父に関しては、
いつまで経っても京介の独占欲は卒業していない。
「どうして父に言う必要がある。
言うならお前の親に言え。」
「東条… 」
京介の剣幕に…
安本は驚いたような顔をした。
「京介、忘れたのか。
わしと安本君は友達だ。
友達に進路を決めた、と報告して何が悪いのだ。それで… 」
と、栄は息子を諭し、
安本を目を細めてみている。
京介の剣幕には驚いた安本だったが、
栄の穏やかな言葉、態度に、
気持が楽になっている。
「はい。僕、税理士か会計士になりたいと思っています。
数字は嫌いではありませんし…
有名大学とは言いがたいですが、
卒業生で独立して事務所を開いている人が大勢いました。
大きいところに就職しても大学名で差別される、ということも聞きました。
親もそんな事を言い、
一年後にもう一度受験しても良いと言ってくれましたが、
でも、資格になる国家試験を受かれば
何とかなりそうに思えました。
初めはどんなところで見習いのかたちでも、
いつかは独立する、と考えていれば、
そう言う目標を持って学生生活を送ります。」
京介が睨んでいるから、
どことなく気持ちが落ち着かない安本だが、
とにかく栄に話している。
そう、自分の気持ちを聞いてくれる人がいると言う事が
とても嬉しい安本だ。