天使と野獣
「それと、こんな事は言いたくは無いが、
吉岡を突き落とした奴はこの学校の誰かだと思う。
一メートル半以上ある手すりを越して落ちるには、
自殺のように自分から手すりを上って落ちるか、
誰か力のある奴に突き落とされたとしか考えられない。
酒井和美は155㎝でちょっとばかり力を加えたぐらいでは不可能だ。
俺がすぐに西側の階段を上がったが誰にも会わなかった。
東側は、俺が上がってしばらくしてから他の奴らが上がってきたが、
その時は既に遅かった。
三階のどこかに入ってしまえば分らないからな。
チーズをどこで見つけたかは知らないが、
とにかくあんた達もこの学校の生徒を疑って来たのだろ。」
言葉は雄弁だが顔は無表情に近い京介。
その鋭くなった眼差しで刑事達を睨むように見つめている。
「君はなかなか鋭い事を言うなあ。
確かに我々も彼女が突き落としたとは思っていない。
これは吉岡君の学生服の右ポケットにあった。
が、彼の体内から薬物の類は検出されていない。」
と、刑事の一人、木頭が応答した。
「と言うことは、吉岡が拾ったのか取り上げたのかは分らないが、
とにかく見つけてポケットに入れていた。
それを犯人が取り返そうと吉岡を屋上へ誘って…
多分坂井和美は、その時の吉岡の様子に違和感を抱き、
そっと後をつけた。
それでその現場に遭遇してショックで
あのように怯えることしか出来なかったのだ。
ひょっとして、彼女はもっと悪い状態になっているのか。」
京介は食い入るような眼差しで、
頭に浮かんだことを口にし、
刑事たちを見て返事を待っている。
そんな言葉をさりげなく出す京介…
高木は全くの傍観者になって話を聞いているだけだ。