天使と野獣

あ、そうか。坂井和美だ。

和美と話でもしていた時に屋上に呼び出されたのだ。

勿論和美も一緒に行き… 
そのまま人質のようになり、
抵抗出来ない吉岡を犯人達は殴ってから突き落とした。

その場面を見たくなくても見てしまった和美は、

自分のせいだと思い込み心が病んでしまった。


そう考えれば話が繋がる。
とにかくそれが誰なのかを見極めなくてはならない。

そう思い込むと、京介は吉岡が在籍していた
二年六組の教室の前に陣どった。


高橋直道は二年生でも三組だ。

そして昼休みを告げるチャイムが鳴り、
教室から生徒達が三々五々と出て来た。
食堂へ簡単なものを食べに行く奴、パンを買いに行く奴、
弁当を食べるために手を洗いに行く奴やトイレに行く奴… 

みんな一様に、教室を出たところで
驚いたような顔をして立ち止まる。


そこには… 三年生の東条京介が男子生徒の顔を、

その涼しげな瞳を氷のように冷たくさせて、
一人一人睨みつけていた。

その恐ろしいほど冷たく鋭い眼差しで… 

誰もが、その視線を浴びると目を伏せて一礼して通り過ぎていく。


しかし、二人だけが… 

ドア近くまで来て、慌ててUターンして席に戻り動かなかった。

それはまさに、京介の眼差しから逃げるような行動に見える。


あいつらか。

京介はその二人を眼中に留めた。
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