泥もしたたるいい女

「これ、着て」

傘に隠れて顔だけ見えない。その男の人の手には紙袋が下がっていた。

紙袋にはNaroluの文字

「こ、これ…」

寒くて歯のねがあわないのかはたまた緊張しすぎて声が震えてるのかは自分でもわからなかった。

「俺、ここのマネージャーやってる相楽総典って言います。紙袋に名刺入ってるから後で必ず連絡下さい。お詫びさせて」


Naroluのマネージャー!?

Naroluと言えば双子のデザイナーが一切を取り仕切ってる有名ブランド…

今日履いてるパンプスだってなけなしのバイト代で買ったNaroluのもの…

「い、いただけません!!私、大丈夫ですから!!」

と傘をあげて、私は初めてその人…相楽さんの顔をみた。

「だーめ。女の子にこんな格好させたままなんていられないよ。ホントなら送ってあげたいんだけど…これから打ち合わせがあって」

ゴメンね。と睫毛が影を落とす。雨に当たっている相楽さんは私の開いた口が塞がらない程に、格好良かった。
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