蜜に恋して
ガチャ
「蜜ちゃ〜んっ!紅茶どう……ぞ……?」
突然開いたドア。
可愛いティーセットに私の好きな紅茶を入れてきてくれたのであろうユミママが、ドアの前で固まった。
「…ぁ、えっとユミ、ママ、これは…。」
と、私が振り返ったところで、ユミママはガチャン!とティーセットを床に置いた。
「陸?あんた何蜜ちゃん泣かせて楽しそ〜なことしようとしてたわけ?」
(ゆ、ユミママが…キレてる…。)
怒っているはずなのに顔だけはにっこり。
あぁ、陸はこんなとこまでユミママに似たんだな、なんて私が呑気なこと考えてる手前で、
陸は面倒臭い奴が来た、とでも言いたげに顔を歪めた。
「はぁ…。陸あんたね、蜜ちゃんはうちにとっても大事な一人娘なのよ。ちゃんと立場は弁えなさい?いまあんた、蜜ちゃんの何?」
蜜を大切に思うユミは陸を叱った。幼なじみである陸を叱ったのだ。
その真意をぼーっとしていた蜜が読み取ることはなかったのだが…。
黙り込む陸に、蜜は何とかしなければと頭を働かせた。
「ユミママ!もう11時過ぎてるっ!わ、わたしそろそろ帰るねっ!」
「…っえ、蜜ちゃん!!?」
脱兎の如く陸の家を飛び出した私は、気づいたときには既に自分の部屋にいた。