蜜に恋して
「美沙、ちょっといい?」
ガヤガヤとうるさい昼休みの教室、美沙を呼ぶと、
回りの派手な女子が同時にこちらを振り返った。
「ごめん、先ご飯食べてて!」
「美沙あついね〜!!」
「いってら〜!!」
美沙が席を立つと大声で騒ぐ女子達。
輪の中では笑顔だった美沙は、話の内容を大方把握しているのだろうこちらに向かう顔はひどく不機嫌そうだった。
「陸、どーしたの?」
「とりあえず場所、静かなとこ行こう。」
「…うん。」
そうして美沙を連れて屋上へと上がった。が、
「んだよ、開いてねーじゃん。」
ドアノブを回すものの、ガチャガチャと音を立てるのみ。
「陸、ここでいいよ…。」
シンと静まった階段の踊り場。
生徒の姿はない。
「あぁ…。
美沙、やっぱり俺…美沙のこと一番にしてやれない。ほんと勝手なこと言って、本当に悪いと思ってる。」
俯いたままの美沙。
俺は美沙が今どんな顔をして、何を見ていたかなんて、気づかなかった。