蜜に恋して
「みつー?出かけるのー?」
限界でスリッパを履いたところに
リビングからママが顔を出す。
年の割にかわいらしい風貌を今だ漂わせる料理上手な母だ。
「うん、ちょっと陸んとこー。」
「あら、蜜から陸くんのとこ行くなんて、久しぶりじゃない。
ユミとユウ君によろしく言っておいてね。」
「はぁーい。」
パタンとドアを閉めて、数歩歩けばもう陸の家の玄関だ。
ピンポーン
「あのー、っ!!」
ガチャ
「蜜ちゃんじゃないの!!!!」
ドアを開けてそう言うなり蜜に抱き着いたのは陸の母、ユミだ。
「く、くるしーよユミママぁ…」
「だって!!蜜ちゃんからうちにきてくれるなんてすごい久しぶりじゃないのっ!!ユウっユウっ早く来て〜っ!」
ユミママがそう呼ぶと、陸の父であるユウパパが登場した。
「なに騒いでんだよユミ……って、えっ、蜜ちゃん!!!!」
そう言って目があうなり、駆け寄って来て頭をガシガシ撫でられた。
「またかわいくなったな!!」
「ゆ、ユウパパ痛いよ……。」
ボサボサになった髪を手櫛で整え終えると、
「お、みつ?」
風呂上がりと見受けられる陸の兄、蓮(れん)が顔を出した。
「れんちゃんっ?帰ってきてたのっ?」
「おう、明日にはまた戻るけどな。」
そう言って優しく頭を撫でられた。
れんちゃんは今は大学生で家を離れている。
会えたのは本当に久しぶりで、本当の兄のように慕っているれんちゃんと会えて来て良かったと思えた。
陸の家はこの他に陸の弟の湊(ミナト)がいて、男3人兄弟のため、
ユウパパもユミママも、私を娘のように可愛がってくれているのだ。