Love Slave
床に顔を擦り付けたせいで前髪がぐしゃぐしゃになった。軽く整え、会長の背中につき、肩を揉み始める。


「あー、もっと右! 右! 肩甲骨辺りを……そこそこ」


肩を指圧マッサージ。強くやらないと文句を言う。


会長は一見、華奢に見えるけど、肩はがっちりしていて、思っていた以上にいかり型だった。筋肉もあるので、多分鍛えている。


透き通った茶色い髪から良い香りがする。どんな香水使ってるんだろう。


「……どうした? 黙り込んで」


「い、いえ……別に。会長、凝ってますね~」


一応誤魔化す。それにしても本当に凝ってるな。冗談かと思ってたけど。


「あー気持ちよかった。助かったよ。今度から肩叩き券でも作ろうか」


まるで母の日、父の日みたいだな、それ。


会長の胸ポケットから着信音が響いた。画面に表示された名前を確認すると、通話ボタンを押す。


「Hello?」


会長は携帯に出ると、突然ネイティブな英語で流暢に会話し始めた。英語分からないので何話しているかは不明だが、会社の取引先と話しているように聞こえた。御曹司とは聞いていたが、まさか会社経営してるのか?


「Why? Well……ok,goodbye」


会話が終わると、会長は私のことをちらっと見た。


「俺に惚れ込んだ?」


「な、何言って」


「さっきからそんな感じしたから♪」


コイツは……サディストで俺様系でもあるのか!?
勘違いにも程がある。


「ほらっ」


「あ……っ」


メガネを外された。会長の顔がピンボケに見える。だから今どんな表情してるか分からない。絶対笑ってる。


「何だ、メガネなしのほうが可愛いじゃん」


「か、からかわないでください」


メガネを強奪する。レンズを合わせると、やっぱり笑っていた。


「そう怒るなよ、もとか」


「よ、呼び捨てしないでください!!」


電光石火で逃げ出し、扉を破壊する勢いで閉めた。
< 36 / 281 >

この作品をシェア

pagetop