Love Slave
静まりかえった校舎。夕陽に照らされて茜色に染まる。
昼間は喧騒に包まれていたから、少し不気味だ。


1年C組の教室。鍵を開ける。このクラスの人間だ。
職員室の先生には「忘れ物したから」と適当な理由をつけたら、疑いもなく鍵を貸してくれた。


席票を見なくとも分かる、早乙女もとかの席。


「さぁ、見つかる前に」


3人は意気投合し、作業に取り掛かる。
まず、油性ペンで机を落書きする。罵詈雑言、中傷的な言葉を散りばめて。
机の中を荒らし、教科書とノートをビリビリに破く。


「聞いた? 噂によると、歓迎会の時この女と消えたらしいよ」


「嘘、マジ!?」


「大和様を振り回してんのよ、きっと! 生意気なのよ、許せない!!」


苛立ちながら破ったページを折り紙代わりにする。より屈辱を味あわせるために。
最後に、机と椅子に用意していた血のりを振りかける。


「よし、そろそろ行くわよ」


長居は無用、そそくさと教室を後にする。
そして、すぐさま校舎裏に向かう。ここが待ち合わせ場所。人気がなく、見つかる可能性は低い。


「終わったみたいね」


3人の前に待っていた人が現れる。満足げに微笑み、ゆっくりとした足取りで近づく。


その人は、バッグから『お小遣い』と書かれた茶封筒を1人ずつ渡す。
3人はドキドキしながら中身を見るが、3人同時に不満気な顔を向けた。


「ちょっと、たったこれっぽっち!?」


「もっとくれたって……」


「ダメ、ダーメ。もらえただけでも感謝しなさい」


クックック、と喉で嗤う。3人はこれ以上の文句は言えなかった。この人は金持ちで、言うことを聞いてくれたら人件費をくれると約束してくれた。

怒らすと、この学校を退学されてしまう恐れがある。これっぽっちと評しても、そこらでバイトするよりずっと高い。


「さてと、まだお金欲しいんでしょ? だったら働きなさい、アンタ達にはまだまだやらなきゃならないことが山ほどあるんだから」


「……で、今度は何するつもりなの?」


4人はハッと気づく。


視線の先には、学園最強の生徒会執行部が仁王立ちしていた。
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