Love Slave
嘘でしょ、あの人がこの学園の生徒会長だったなんて。


「これからの3年間、楽しいこともあれば嫌なこともあります。でも、後悔がないよう過ごしてくださいね」


ほとんど会長の挨拶は耳に入らなかった。でも、周りの女の子たちも同様だった。
みんながみんな、目にハートマークを浮かべる。会長の周りにはキラキラした点描さえ感じられた。



「私、執行部目当てでこの学園入ったんだよね~」


「うん、私も」


「ああ……。やっぱ、草薙大和会長素敵……」


「うんうん、他の3人も退けは取れないよ!」


「は~、あんな色男軍団街中歩いてないもん」



どうやら有名人らしい。他のメンバーも同じ。それにしても、執行部とやらは随分イケメンが勢揃いしているな。まるでヴィジュアル系ロックバンドみたいだ。


(何だ、何だ。ここはホストクラブか?)


「最後に、遺失物のお知らせです。先程、学園付近で携帯電話の落し物がありました。心当たりのある方は生徒会室までお願いいたします」


草薙大和が懐から取り出したものを目の当たりにした瞬間、全身に触れる。
あるはずだったものがない。


ピンクの機種、ネームプレートが付いたテディベアのストラップ。


間違いない、私の携帯だ。やっぱり、あの時落としちゃったんだ。生徒会長がしっかり握っている。


「それじゃあ、高校生活楽しんでね~」


長髪メガネがチュッチュッと投げキッスを送り、女子生徒は湿疹寸前。

執行部が去ってもなお、黄色い声援は止まないままだった。

式が終わってぞろぞろと教室に向かう。担任は40代の髭面親父だった。新入生便りを渡されたが、頭の中は携帯電話のことでいっぱい。


HR終了後、急いで生徒会室に向かう。でも場所が分からない。カバンから地図を取り出す。そこである事実を知ってギョッとする。


一般生徒が利用する校舎と特別教室がある西棟や東棟とは別に『生徒会棟』と呼ばれるところがある。つまり、生徒会執行部は独立した存在となっていた。特別扱いされていたのはそのせいか?


とにかく、場所はすぐに分かった。急いで生徒会室に向かう。
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