君を抱きしめるから~光、たずさえて~
「よし! いくぞ」
周囲に甘い香りが漂った。
早く用件を済まさなければ、むせかえりそうだ。
だんだん、濃度を増してゆくそれはジャコウと花の香りが混じっているみたいだ。
二度目の渡りの際はいつもこうだ。
「このティーレックスを……」
『なーんだ』といって放置してしまった、なっちゃんに感謝だ。
小学生の腕力では不可能だったことでも、今ならできる……気がする。
それに、下手にあそこでがんばっていたりしたら、取り返しのつかない怪我を負っていたかもしれないし、今のボクの用件をすますためにおちおちしてられない。
ボクは無意識に頬の傷にふれた。
ボクは持ってきた人形をゴジラの横に置いてきた。