君を抱きしめるから~光、たずさえて~
「ハアハア、君たち、そろって遅刻なの? いったい、ハア……どうして」
やっとたどり着いた黒いジャージの先輩が言う。
「仲がいいなあ。でもだいぶ前に校門に着いてたよね。彼女が彼氏を待ってたにしても。君、すごい勢いで追っかけていったじゃない」
「あたし、先輩にひとことお礼が言いたくて。落ちてた人形を拾って返していただいたこと、ありがとうございます」
「ボク、竜野勝義です。こういう字です。タツノ カツヨシと読みます。こちらはタテノ ナツミ。字はこう書きます。楯野奈津実」
名刺よろしく生徒手帳のメモ欄に書いて渡した。
それで黒ジャージの、学年違いの姿に、ボク達二人はもう一度謝意を述べた。