~天に背いて~<~天に送る風~第二部>
「や、やはりだめだ。私は!」
「後ろを振り返ってはなりません!」
ゴクリ、とのどを鳴らし、王子はかろうじて恐怖に打ち勝った。
そうだ。
あの説教くさい母親に育てられ、小言の得意なリリアの娘だ。
何をしても、なりません!
いけません! と怒鳴りつけていたではないか。
そうだ、信じるんだ。
臆病な自分をしかりつけながらも、背後を守ってくれている。
アレキサンドラは唯一の誠の親友だったではないか。
(勇気を出せ! サフィール。貴様は一国の王子ではないのか。国の大事を前に、たった一人の味方さえ信じられないのか)
「あなたは独りではありません」