~天に背いて~<~天に送る風~第二部>


 そのとき二の腕にふと触れた感触に、不思議な感覚を覚えながらも、サフィールはまっすぐに沼を抜けた。


「ありがとう、リック」


 というと、


「はあ? この沼地って別段なんでもなかったですね。てっきり罠だと思っていたのに」


 サフィールは驚いて、


「別段って、あの声は君だったんじゃないのか? 悲鳴をあげていたじゃないか。私は何度振り返ろうとしたことか」


「あ。それは……ちょっと、ヒルに噛まれて。でも、そんな、悲鳴だなんて。ボク、そんなに軟弱じゃないですよ」
< 60 / 118 >

この作品をシェア

pagetop