~天に背いて~<~天に送る風~第二部>
そのとき二の腕にふと触れた感触に、不思議な感覚を覚えながらも、サフィールはまっすぐに沼を抜けた。
「ありがとう、リック」
というと、
「はあ? この沼地って別段なんでもなかったですね。てっきり罠だと思っていたのに」
サフィールは驚いて、
「別段って、あの声は君だったんじゃないのか? 悲鳴をあげていたじゃないか。私は何度振り返ろうとしたことか」
「あ。それは……ちょっと、ヒルに噛まれて。でも、そんな、悲鳴だなんて。ボク、そんなに軟弱じゃないですよ」