~天に背いて~<~天に送る風~第二部>


『そんな、私ではないか。でも、ここにいるのは、こんな、私しかないのだ』


『寂しいことをおっしゃらないで。あなたは、あなたには小さ神の守護すらついているではありませんか』


『当人がなんというか、知れないがな』


 ふふっと、サフィールが笑った。


『それはわたくしにもわかりません。王子』


 後ろ手に縛られたまま、柱のひとつに全員ぐるりと鎖をかけられて、知らんぷりを決め込んでいたクリスチーネがポソッと言う。


『それよりどうやってここから抜け出す気なんだ。それを先に言えよ。褒めてやるからー』


 そこは冷たい石牢だ。

 座り込んでしまうと冷気が体温を奪う。
< 99 / 118 >

この作品をシェア

pagetop