CREAMSODA
第一章

紗菜

− 2002年夏 −

東京都荒川区に町屋という街があるのを、ご存知でしょうか。


町屋に住む赤木紗菜 20歳

現在早稲田大学 経済学部の二年生で、町屋のマンションで一人暮らしをしている。 

紗菜は、赤ん坊の時に母親を亡くし、叔母に引き取られたが、その叔母も去年他界した。

大学へは毎日 都電荒川線で通っている 
東京で唯一残っている都電沿線から見える、下町の風景が紗菜はお気に入りだった。

ある日の夕方、紗菜のマンションへ一人の男性が訪ねてきた。

「赤木紗菜さんですね!」

「はい そうですが!
どちらさまですか?」

その男性は40代半ばで、身なりもしっかりしていた。

「昔あなたのお母さんに、大変お世話になりました。」

「・・・・・」

「大きくなったね!
最後にあったのは、お母さんのお葬式の時だったからな。」

「私 お母さんの事は何も知らないの
今更、聞く事もないわ!
お引取りください。」

「そう言わず、少しだけお話しさせて下さい。」

紗菜は男性の必死さに折れ、少しならとリビングへ案内した。

男性は青山で若者向けのファッションブランド「PinkCats'」のブティックを経営している高橋伸二という。

「君のお母さん、水沢紗耶さんとは、君が生まれる一年位前に知り合ったんだ。

その時私は、ロックンロール族で原宿のCREAMSODAというお店でバイトをしており。
毎週日曜日になると、ラジカセ片手にホコテンで、ロカビリーダンスを踊っていた」

◎ロックンロール族は、1979年から1984年頃にかけて流行した、東京都原宿の代々木公園横に設けられた歩行者天国で、ラジカセを囲み、リーゼントに革ジャンというファッションでロカビリーに合わせツイストダンスを踊るグループ



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