CREAMSODA
ホコテン
当時、日曜の代々木体育館前の歩行者天国は、関東近郊からラジカセを片手にアメリカングラフティーのサントラ盤や50S・60Sで踊る若者がごった返していた。

ファッションは主に全身黒で統一された皮ジャン派(キャロル系ロックンローラー)と
(50年代系)のロカビリーファッションに二分されていた。

ここで重要なのが、彼らのダンスステップについてである。

当時のロックンローラー族のメインステップと言えば主にツイストとジルバだったが。
実はツイストは、50年代の踊りではなく60年代のチャビーチェッカーのTWISTに代表される踊りで、元来はもっとおとなしいステップであった。

派手なアクロバットに足をワイルドにひねる日本のツイストは、言わば原宿ステップと呼ばれ日本独特の文化であった。

当初は表参道のキティランド前で小人数で踊っていたがクリームソーダブームの到来と共に次第に人数は増加していき原宿のみならず、日本全国でローラー族の光景が見られるようになった。

この話はそんな時代の物語です。


− 1981年夏 −

当時の若者達が集う原宿に、CREAMSODAというブティックがあった。


紗菜の母、水沢紗耶(高3)は友達の桜井綾美(高3)とホコテンにいた。

「紗耶!又新しいスカート買ったの?」

「だって先週の日曜日にジルバ踊っていた時、後ろの木に引っ掛けてダメにしちゃったんだもん!」

「クリソ(CREAMSODAの略)で買ったの?」

「これはPeppermintだよ、クリソの水玉ほしいな!」

「綾美、クリソの店員さんと知り合いなんでしょ。」

「伸二さんでしょ!
後で行ってみようか」

二人は2時頃迄踊ったあとブティックCREAMSODAに向かった。

「高橋伸二さんいますか!」

店先で綾美は知り合いの、高橋伸二を呼び出した。
紗耶は歩道にいた野良猫と戯れている。

「伸ちゃん、又従業員価格でお願い!」

「仕方ないな! まぁ綾美の頼みだもんな。」

「紗耶ぁ〜!」

綾美が紗耶を呼んだ時に野良猫が車道に飛び出してきた。


< 3 / 39 >

この作品をシェア

pagetop