幕末異聞
「さて、そろそろ帰りましょうか。土方さんにバレちゃいます!」
パンパンと地面に付いていた袴の泥を払いながら沖田は墓石の前で手を合わせ、お梅が安らかに眠れるよう祈った。
「今度は、花の一つでも持って来んと化けて出てきそうやな」
楓は敢えてお祈りなどはせず、そのまま歩いて帰ってしまった。
「あはは!あなた達らしい挨拶ですね!やっぱり、楓の友達は貴女にしか務まらないようです」
葉音一つ聞こえない竹林で墓石に語りかける沖田。
「どうか、彼女を見守っていてあげてくださいね?」
墓石に背を向けて遠ざかって行く沖田に一筋の追い風が吹いて彼の髪を揺らした。
それはきっとお梅からの了解の合図だったのだろう。