幕末異聞
その頃、門には永倉と原田が一足先に待っていた。
「芹沢局長…帰ってきたらしいな」
永倉が懐に手を入れたまま横にいる原田に言う。
「そうなんだよ!んでよ、運悪く楓と鉢合わせしちまったんだよ」
頭の後ろで手を組み、塀によっかかりながら原田は答えた。
「楓がッ?!…大丈夫だったのか?」
「それがよ、その現場に土方さんが現れたんだよ。それで何しに来たと思う?」
にやにやと含み笑いをしながら永倉に質問した。
「何って…挨拶じゃないのか?」
「がはは!!んな訳ないだろ新ぱっつぁん!!
あの土方さんが他人に挨拶しにわざわざ部屋から出で来るか?!!」
「いや、一応上司だしさ。もしかしたらと思ったけど…有り得ないな!」
永倉も少し馬鹿にするようにケラケラと笑った。
もし、本人がこの会話を聞いていたら問答無用で斬られているだろう。
「で?何しに来てたんだ?」
「おう。驚いたことに、あの土方さんが楓を芹沢さんから遠ざけようとしてたんだよ!!」
「………土方さんが?」
念のためもう一度確認する永倉。
「そうそう」
「「…………」」