盃に浮かぶは酒月


―――


穢れの元凶が去れども、荒廃した地上はそのままだった。

剥き出しの大地も、転がったままの骸も。



桂撫は地上で殺戮を行った。

だが、殺しすぎた。
取り返しのつかない数の人間を、彼は殺めた。

この地上に生きる人間を一人残らず、桂撫は消し去ったのだった。


地上には人間はいなくなった。

だが、他の生き物達は息づいている。

穢れを生み出すは人間。
殺さねばならないのは人間のみ。

それがこの世を救う術だと、彼が信じたからこうなった。


…だがよく考えてみると、


これはある意味、完全な清浄ではないだろうか。


この世を穢し、天人を穢す人間達がいなくなったというのは、この大地の最良の結末ではないだろうか。


そういう意味では、桂撫は赤映に誓った清浄を完遂したと言える。

大地を救ったと言える。


彼は人を捨てることで、この地上の穢れを本当の意味で消し去ったのかもしれない。






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