放課後sugary time
平凡教師と問題児
「有川先生、これもお願いしますね」
先輩教師が差し出してきたプリントを条件反射のように受け取る。
バッチリ化粧直しされた笑顔を見送りながら、放課後の職員室でただホッチキスを留め続けた。
同じ国語の教師なのに、若さに美貌を兼ね備えた彼女は生徒からも先生からも人気が高い。
ついでに正職員だ。
だから……地味でこれといった取り柄も無いわたしは黙って仕事に専念するだけ。
物心ついた頃からいつもこんな感じで人生が流れてた。
郊外の片田舎でごく普通の両親と兄と妹に囲まれて育った。
仲良しだった友達に誘われた高校に進学して、親に勧められた大学の教育学部を卒業。
地元から少し離れた私立高校の非常勤講師として働きはじめて3年目。
一人暮らしをしているアパートと高校の往復だけでほぼ成り立ってる毎日。
作文用紙一枚に収まってしまうような薄っぺらな人生が果てしなく続いてる。
正直つまらない。
わかってるけどそれを変える勇気はわたしには無い。
だから今日も適度に残業を終えて真っ直ぐにアパートに帰るだけ……はずだった。
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