加納欄の唇 シリーズ27
「あ、あの。優勝者のプレゼントなんですけど……」


なんだか、急に恥ずかしくなってきた。


皆が注目していた。



でも。



でも。



ここで、キスしちゃえば公認だよね!



「バ、罰ゲーム、受けてください」


そう言って、あたしは軽く目を閉じた。


周りからは、冷やかしとブーイングの言葉が飛び交っていた。



「悪い」



大山先輩の言葉が、あたしの耳にしか聞こえないくらいの声量で言った。


「え?」


あたしは、目を開けた。


瞳に写った大山先輩の表情は、先程までの優しい表情ではなかった。


ただ、無言で真面目な顔付きをして、あたしを見ていた。



悪い?



何が?



すると大山先輩は、それ以上何も言わず、ステージから降りてパーティー会場を去って行った。


「大山先輩!?」


一瞬何が怒ったのかわからず、会場が静かになったが、鮎川さんが適当なフォローをいれて、また笑い声が聞こえはじめた。


あたしの耳には、鮎川さんの声が聞こえなかった。



悪い。



大山先輩が発した言葉だけが、頭の中でリピートしていた。




−おわり−




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