『月の唄』
私は恐る恐る床に目をやる・・・
カエルはくるくるした丸い目をして、こっちをじっと見ている、しかもニヤッと笑いながら。
 
いるいるいるいるいるいるいるじゃーん!!!
 
詩織は怯える私を見て、呆れ顔をした。
「美月あんた何寝呆けてんの?朝から騒がしいなー。」
と言って部屋を出ようとする・・・ 私は慌てて詩織を引き止める。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って・・・カ・カエルが笑ってるよ〜」
詩織はそんな私を見て
「はいはい、良かったね!カエル君も朝から機嫌がよろしいようで!あんたの朝食作ってあげたから早くおいでよ!」
と言い残して部屋を出ていってしまった。
私は無情にも閉じられた扉にへばりついて考える・・・
詩織・・カエル・・・見えてないのかな?幻?うん、きっと寝呆けてるだけなんだ、うん!
私はゆっくりカエルの方を見る・・・!!?
 
やっぱいるよーっ!!
私は震えながらカエルを見つめる。
カエルはあいかわらず笑っているのだか・・・全然動かない。
これじゃあ蛇に睨まれたカエルじゃなくて、カエルに睨まれた人間だ・・・動けない。
私はカエルから逃げるために恐る恐る扉から外へ逃げようとした。
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