愛しい人へ
「拓海ぃ」俊平が俺の横にちょこんと座る。
「ん?」
「ほい」俊平は握っていたお菓子をくれた。
「おう。お前気の効く男だな」
「うん」
「うんかよ(笑)」
「うん」俊平はお菓子の袋を開けることに夢中になってる。
俺は自然と優しい笑みを向けていた。
「今日ね、ゆりちゃんと遊べたよ」
「おう。よかったなー」
「ゆりちゃんね、僕にお花をくれたよ」
「そうか~いいなぁ~!」
ゆりちゃんは俊平の初恋の女の子で
すごくかわいい女の子だ。
俊平はゆりちゃんが好きだってことを
俺にだけ教えてくれた。
まだ3歳なのに、顔を赤くして
「秘密にしてよね」といった。
俺だけが知ってるということを知ったら
姉ちゃんは嫉妬すると思う。
「拓海、元気ないの?」
「なんでぇ?」
「ここにひとりでいるから」
「そんなことないよ」
俺は俊平に微笑んだ。
「拓海ぃ好きな子いる?」
「うーん、いないなぁー」
「お友達は?」
「タケとか?」俺が聞くと、
「違うよ、タケ坊は男でしょ?」
俊平はおかしそうに笑った。