ディア フレンド

第一時的接触(ファーストコンタクト)

「杏南・・
今日のはただの妖怪【スポク】では
ないの。
もしかしたら・・」


「頭首? 鬼の一族の・・」


有李栖は静かに首を左右に振る。
初めて会う・・
どんな人なのか・・
アタシは想像が付かない・・

「杏南、鬼の一族は霊力を
狙ってるの。
私の結界でこの家は見えてないけど
渉たちを守らないといけない。
だから・・覚悟して。」


最後の言葉が重く圧し掛かる。
自分で戦うのは自己責任なのだから
まだいい。
人のことを守るというのは
凄く責任が重い。
気を引き締めないと・・


「杏南・・頑張れよ。」


「ありがと。
行って来ます。」


アタシは渉に笑顔を見せる。
心配は掛けたくない。アタシは大丈夫。
有李栖と共に玄関のドアを開ける。
いつもよりドアが重い。
外はいつものように心地よい風が吹く。
空は薄暗い。月が不気味にアタシを見つめる。
意を決し、1歩踏み出す。


薔薇園につく。
風で薔薇がサワサワ音を立てて揺れる。
別にこれと言った妖力は感じない。
普通は禍々しい妖気が来るのに・・

コツ・・コツ・・・
微かに足音が聞こえる。
アタシは咄嗟に狗獣刃を構える。
段々、足音が近付いて来る。
有李栖も弓矢を構える。
その姿が闇から月に照らされ、見えてくる。


「あれが・・頭首?」

その姿は・・
ワインレッドの髪。血のように赤い瞳。
背中には大きな剣。黒い服を纏ったアタシと
同い年くらいの男子。

「貴方・・・鬼の頭首?」


「ああ・・君が封鬼師か。
そっちの巫女は・・ふっ。
まずはこて試しかな。」


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