君の影をみてる〜幼なじみの恋〜
スーツの男は急いでいた様で

「すみません!」と

一言だけ残し、改札へと姿を消した。


一つため息を吐いたあと、
怠そうにカバンに手を伸ばした時、

スーッと、誰かの手が、カバンを拾いあげた。

「え?」

さっきの傘の男だ。


「ホント大丈夫か?」

「…」

「顔色悪いゾ!コレ、結構重いし。」

「大丈夫です。さっきから、有難うございます。」

カバンを受け取ろうと手を出すと、

傘の男は、カバンを自分の身体のうしろへと回して言った。

「そうは見えないけど。」

「ちょっと!?」

「家のそばまで送るよ。」

「…なにそれ?ナンパ?」

「ボランティア。」

「ほっといてください!二日目なだけですから!」

「…わ〜お!初対面で報告どーも。やっぱり、どこか、おかしいのでは?」

私は急に我に返り、赤面した。

「ほ、本当に大丈夫です。家もすぐそこだし…カバン返してください。」

「…ハイ、どうぞ。」

カバンをそっと受け渡された時、

なんだか分からないけど、

この男の視線を察知し、

私も、はじめてまともに、顔を見上げた。
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