君の影をみてる〜幼なじみの恋〜

重なる影

部屋に帰った私は、さっそく手帳を出し、
男の書いたページを広げ、
ベッドに横たわった。


『寺岡 慶太』

「“けいちゃん”って聞こえたのかな?…きょーちゃん!けいちゃん!…聞き間違えるかな?」

そう、私はそれを確かめたかったのだ。


携帯番号やアドレスなんか、どうでもよかった。

が、なんだか色々と書いてある。


「へー、大学行ってんだ〜。一つ上か…」


そして締めくくりに、アルバイト先の店の名前と
簡単な地図も書かれていた。

「何これ?住所のつもり?」


手帳を閉じて、枕元にポンッと置くと、
仰向けになって目をつぶった。


そして、恭一を思い浮かべてみたりする。


私の中の恭一は、
当たり前だが、高校1年のままで止まっている。

が、ふと、大学生になっていたらと想像してみる。


すると、不思議とイメージがわいてくる。

車かなんかも運転していて…

その車は、合図するように、ププッとクラクションを鳴らし、
私の横を通り過ぎて行った。


(ん?違う!きょーちゃんじやない!)

そう。
それは、傘男の慶太だった。

(なんで?)
< 165 / 202 >

この作品をシェア

pagetop