Time is gone
「違うよ。じいちゃんは骨董品が好きだろ? だからだよ」
 祖父は目を丸くし、窓から外の天気を再度確認し、時計に目をやり、視線を僕に戻した。
「そうか、それはすまぬことをした。……じゃが、この時計はお前が持ってなさい。お前に釣られたということは、この時計がお前を選んだということでもあるんじゃ」
 それはいかにも祖父らしい言葉だった。それなのになぜか、それは祖父の口からではなく、例えるなら、霊が憑依したイタコの口から発せられた、〈台詞〉のように響いた。
「でも、こういう時計を持つ趣味ないからな……」
「いいじゃないか。学校に持っていけば、みんなから羨ましがられるぞ」
 その声は、いつもの祖父が持つ温かな響きを取り戻していた。
「時代が違うんだから、そんなことないよ。これぞジェネレーションギャップ」
 僕は得意げにそう言い、時計をバックの中に仕舞った。
< 110 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop