Time is gone
自室のベッドの中、僕は暗闇の一点を見つめていた。その枕元には、丹念に磨かれた時計の姿があった。汚れはすぐに落ちたが、その染みついた泥臭さ、ヘドロの臭いを取るのに一苦労した。気が付けば日をまたぐ寸前、慌ててベッドに潜り込んだ。だが眠りが忍び寄る、その足音すら聞こえなかった。
明日はさすがに、塾に行かないとかな……。
「親にばれるぞ」
剛の脅しが蘇る。
行っても寝ていればいい。それでも、あの雰囲気がどうしても……。
受験を目の前に控えた三年生たちの発する、殺気にも似た緊迫感。目に映る全てが敵。一点でも多く勝ち取り難関有名大学の門をくぐろうと、必死の形相で参考書とにらめっこ。そんな様子を見ているだけで、僕はアップップ、だ。
だが周りは違う。その雰囲気に触発され、同級生たちは燃え上がっている。インフルエンザのように蔓延した熱病に対し、十二月の寒空のように冷え切った僕の闘志。