宝箱
 
 にっこりとさわやかな笑顔をみせて、私の頭をくしゃくしゃ撫でる藤田。
その大きな手のひらの感覚になんでか少し、照れくさくなってしまう。

 今の色は、あたたかなオレンジ。

心がぽかぽかしてきて、自然に笑みが浮かぶ。

「おっ!!いい笑顔だな加納」

 そういって、いっそう笑みを浮かべた藤田に少しの間、目がとまってしまう。

「加納、手出してみろ」

 ポケットをごそごそとあさりながら藤田は言う。

「ん?」

 素直に手を出すと、コロンッと、転がるように藤田の手から出てくるあめ玉。

「これ…」

「今日のおだちんな」

 それは青い包装紙にくるまれていた。

「ありがとうございます」

「おう!!じゃあ、気を付けて帰れよ」

「はい」

 そういって笑顔を一度見せて中に入っていく藤田。
私も教員室に背を向けてカバンをとりに教室へ戻る。


 その手に握ったあめ玉から、私の中に色が入ってくる。

灰色の中に一つ、青い雫が落ちてきた。





End


ふと思いついた先生×生徒。

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