宝箱
うつされてもいいから
 
「ごほっ…ごほっ、げほ!」

「げほって…可愛げない咳だな」

「う"るさい…」

 昨日からつづく咳。もうのどがやられてしまった。

「ほら、アイス」

 そんな私に笑いながらも、優しい声でバニラアイスの乗った銀のスプーンを向ける恭平。

「…あ〜…っん」

「どう?」

「ん〜、冷たい」

「アイスだからね」

 一瞬キョトンとした恭平は、あははと笑いだす。

私はそんな恭平にドキドキしてしまう。

「俺も一口も〜らい」

「あっ」

「ん?」

 止めようとしたが、少し遅かった。

私の大好きなバニラアイスが乗ったスプーンは恭平の口の中に入ってしまった。

「なに?間接ちゅー?」

 楽しそうに笑う恭平は少し色気が出てて、熱とは違った熱さが私の頬を染める。

「ばか!!風邪うつっても知らないから!」

 照れ臭くてそっぽを向くとふわりと何かに包まれた。

僅かな風とともに嗅ぎ慣れた香水の匂いがした。

「うつされてもいいから、くっていい?」

 まるで親に置いてかれたみたいな小さな声で私の耳元にささやく恭平。

「いいに決まってるでしょ!」



End

「ねぇねぇ、一緒に寝よ」

「子どもか!!」


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