ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】


 だが後悔はしない、自分には後悔する資格すらないのだ、そう自分自身に言い聞かせ、蔦山はゆっくりと視線を落とす。


 そう、涙を流すことすら許されない。


「まどかの遺体は


 とても綺麗だった」


 俯いたまま、独り言のように呟いた。


 が、すぐに視線を理沙へと戻すと、


「悪い、希世を頼む」


 そう言いながら、希世を横目で見やり、すぐにまた理沙を真っ直ぐ見詰めた。


「あんた、まさか……龍と皆人を?」


 理沙は驚きを隠しきれずに、目を大きく見開く。


「俺が戻らなかったら、希世の面倒、あんたが見てやってくれ」


 蔦山は今、自分の命を投げ出してでも、龍一と皆人を救うつもりでいるのだ。


「どうして……」


 問いというよりは、呟きが理沙の口からこぼれ落ちた。


「龍一とは長い付き合いだ。それに、あいつに借りをつくると面倒だからな」


 そう言って、蔦山は今にも泣き出しそうな顔で苦笑する。


「それに有坂は……弟の方は、敵に回しても憎めない」


 今度は、悪戯っぽい笑みを見せる、まるで百面相だ。


 呆気にとられてただ眺めているだけの理沙を残して、蔦山は颯爽と部屋を飛び出して行こうとする。


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