ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「待ちなさいよ!」


 ハッとして、理沙は慌てて蔦山を呼び止める。


「あんた、バカじゃないの? 私が彼女の面倒を見るって、本気で思ってるわけ?」


 蔦山はその言葉に反応したように立ち止まり、振り返る。


「希世には何の罪もない」


 悲しげな、縋るような視線を理沙に注ぎながら、蔦山は言った。


「まどかにだって、何の罪もなかったはずよ!」


 睨み付ける理沙に、蔦山は穏やかな口調で返した。


「だから殺るなら……苦しまないように、痛みのないように頼む」


 再び悲しげな微笑みを見せると、蔦山は一瞬にして部屋から消えた。


「本当にあいつ、バカじゃないの?」


 そう独り言を呟きながら、希世に静かに歩み寄るとベッド端に腰を落とし、そっと希世を胸に抱いた。


 蔦山隆治なんか死んでしまえ、そう願えたら……心底蔦山を憎めたらどんなに楽かと、そんなことを思ったら、ようやく理沙の乾いた涙腺が息吹を取り戻した。


 堰を切ったように溢れ出したそれは、やがて嗚咽に変わり、希世を抱いていたつもりが、いつの間にか希世にしがみついて理沙は泣きじゃくっていた。


 そんな理沙の背に、希世は細い両腕を回し、何も言わずただ、優しく摩ってやった。






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