空に叫ぶ愛

家に入ってみると木造なだけあってか、木の良い匂いがほのかにする。


おばあちゃんの後ろについて行くと、リビングかな?ソファーやテレビがある和室に入った。


その和室とキッチンはどうやら繋がっているみたいで。


広い。


それがこの家の印象だった。



「愛、おじいちゃんに挨拶ばしといで」


「うん」



確か、おじいちゃんは私が赤ちゃんの時に亡くなっていたはず。


挨拶って、仏壇にだよね?


リビングよりもうひとつ奥の和室におじいちゃんの仏壇はあった。


私はおじいちゃんの仏壇の前に正座で座る。


――チーン…


そして、手を口の前で合わせるとそっと瞳を綴じた。



『おじいちゃん、今日から居候させていただきます。よろしくお願いします』



そう心の中で呟くと私は目を開けた。


そして立ち上がり、振り返るとおばあちゃんがそこには立っていて。



「挨拶したね?」


「うん」


「なら愛の部屋に行こうか」



おばあちゃんの小さな背中に「うん…」と再び私は返事を返した。


おばあちゃんは寂しくない?

こんなに広い家にひとりで。

おじいちゃんに先に逝かれて…
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