幕末異聞―弐―
開け放たれた襖を見ていた土方が、頭を小指で掻きながら深呼吸をして山崎に向き直る。
「山崎君」
「はい」
土方と目が合った山崎は、無表情で返事をした。
「君の目から見て、総司に変わった所はあるか?」
「沖田先生にですか?」
この時、山崎は内心感情が表情に表れにくい自分に感謝した。まさか土方が沖田の微妙な変化に気づいているとは考えてもみなかった。
(確かに、今日の沖田先生の顔色は優れない。しかし、普通の人から見たらわからん程度やぞ?!)
改めて、土方の観察力と鋭い勘に驚かされた山崎は、できるだけ自然体を装うように努力する。
「いいえ。特に無いと思います」
「…そうか。ご苦労だった。持ち場に戻ってくれ」
「はっ。失礼します」
手に持った煙管に火を付けるために山崎に背を向けた土方は、不気味な間を置いて、退室するよう命令した。
土方の命令を聞いた山崎は、音もなく副長室から消えて行った。